春や秋(晩霜や早霜)に起こる、気温の低下によって発生する降霜が影響する農作物の被害のことを、霜害(そうがい)といいます。霜害は、移動性高気圧によって夜間に晴天・無風に近くなったときに、地表の放射冷却が起こることで、気温が低くなり、発生します。このような気温の低下は、地形に左右されるので、山間の低地や山の裾野では被害を受けやすく、山腹では受けにくいという特徴があります。
霜害は、休眠期よりも活動期に被害を受けやすく、また発育・伸長している器官の方が氷結しやすくなります。
亜熱帯性植物で、急激な温度変化に弱いコーヒーノキが霜害を受けると、一夜にして葉が茶褐色に代わり、樹木全体が枯れてしまうこともあります。また、被害は広範囲に広がることも多く、完全に元通りになるまでに2~3年かかることもあります。農園の規模によっては、一度の霜害で壊滅的な打撃を受けてしまうこともあります。
霜害は、世界のコーヒー生産量の約3割を占めるブラジルで起こることが多く、霜害を受けると、世界的なコーヒーの需給に影響が及びます。
有名な霜害による被害としては、1975年7月に起こった、ブラジルのパナラ州の大霜害があります。パナラ州はブラジル全土の約5割のコーヒーの収穫量がある州ですが、この大霜害により1976年の収穫量は国内の全収穫量の1%にまで下がってしまいました。
コーヒー価格は、このブラジルの減産により暴騰し、NY取引所の価格は、毎日1ポンド(450g)当たり47セント上昇し続け、1977年には337セントに達し、国内の原料価格も約7倍に上がりました。また、霜害による影響が落ち着き、生産量が回復していくにつれて、今度は価格が下落し続け、1978年には120セントにまで下がりました。このように、ブラジルの生産量とコーヒーの取引価格は大きく関係しており、霜害による被害が世界的なダメージになりうることを示しています。