モカとは、イエメンの首都サヌアの港湾の名で、紅海に面する小さな港町です。モカ港から積み出されたコーヒー豆の総称をモカと呼びます。そのため、モカには、イエメン産のコーヒー豆だけでなく、対岸のエチオピア産のものも混ざっています。
モカは、収穫地名をつけることが多く、それにより産地を知ることができます。モカマタリはイエメン産、モカハラー、モカシダモなどはエチオピア産です。
かつてイエメンのモカは、15~17世紀にコーヒー豆の積み出しで栄えました。コーヒーノキの原産地はエチオピアですが、コーヒーを広めたのはアラビア半島の商人で、モカはその貿易に使われた港です。エチオピアからイエメンまでは、飲用目的で広まっていったのですが、アラビアの商人はその商材としての価値に着目し、モカから出荷する際に発芽しないように焙煎してしまいました。そのため、当時はコーヒーを入手するには、モカから輸入する必要がありました。コーヒー利権を手に入れたモカは大いに栄えました。しかし、やがてコーヒー豆の栽培方法は各国に伝播し、モカから輸入する必要がなくなっていき、コーヒーの出荷で栄えていたモカは、同時に衰退していったのです。
モカはフルーティーなフレーバーと、独特の酸味を持ち、更にコクと旨味も持っているという特徴があり、コーヒー豆のブランドとしては伝統があります。モカを飲む際には、ハイロースト~シティローストの焙煎度が適しているといわれています。